代理人に対する日米の考え方の違いは面白いねという話

弁護士という仕事は、依頼者の代理人となって、依頼者の代わりに案件を解決するという点にあります。

一般的に法律は難しいですから、自分ではできないことを法律のプロである弁護士に代わりにやってもらうという場面が一般的です。ただ、交通事故や、過払金請求や、債務整理など、自分でもできないことはないけれど、手間がかかるからその手間や時間をさけたり、ストレスから離れるために弁護士を入れるということもあります。

こんなことで弁護士を入れるのはどうかなと思われるようなことでも、実際には弁護士を入れることで、円滑に、ストレスなく不安を解消できるということもあり、弁護士の活躍の場はことのほか広いのではないかというのが私の印象です。

 

先日、日弁連の広報誌(「関弁連がゆく」)を見ていると、元プロ野球選手の岡島秀樹さんのインタヴュー記事が載っていました。岡島さんは巨人軍のほか、レッドソックスでも活躍された選手で、インタヴューの中では日米の違いについても触れられていました。

興味深かったのは、契約書と代理人の箇所です。

「Q 少し法律関連のお話になりますが、プロ選手になるとき、契約書を取り交わしましたか。」

「A はい、巨人のときもありましたよ。でも、メジャーリーグの契約書は、これくらいの厚さで(※指で2~3センチを示されました。)、巨人のときとは全然違いましたね。いろんな条項がありましたよ。他のスポーツをやって怪我をしたら解雇されるとか。代理人に全て翻訳してもらって契約内容を確認しました。」

「Q 巨人軍時代は代理人を付けてらっしゃいましたか。」

「A いや、付けられないですよ。代理人を付けたら、嫌がられる雰囲気でした。」

「Q アメリカとは大きく違いますね。」

「A アメリカは、選手と球団が平等、対等なんです。若い選手でも、多くの選手がエージェントを使っています。でも、日本では、選手は球団に雇われているという力関係なんです。日本では、メディアも「あなたが代理人を使ってるの」みたいな論調で、未だに選手が代理人を使うのは良くないというイメージがあるように感じます。」

 

岡島さんがここまではっきり言うのは、それなりに思いがあるからなんだろうなあと思いますが、同じ日本人としては恥ずかしいですね。

代理人を使うことは、全く恥ずかしいことではないですし、それで嫌がるのであれば嫌がるほうが不自然なのです。

個人的な信頼関係で成り立っているのに、第三者の弁護士をいれるのはおかしい!残念だ!みたいなことを言われることがありますが、そういうのを言う人って、上下関係がある上からの人がほとんどですよね。その信頼関係が崩れそうだからこそ第三者が入るのに。本当に信頼関係があれば、第三者が入ろうが何も変わらないだろうと思います。

 

ちなみに、上下関係のある相手との交渉は、第三者を入れる以外にも、こんな方法もあります。

 

第36話 対等ではない相手との交渉

それでも、もめ事の際に弁護士を入れることは、徐々に一般的になってきていますが、交渉事に代理人を入れるのは日本ではまだまだ一般的ではありません。

弁護士は交渉事には強そうに見えて、実は法律とは離れた交渉事は不得意です。トレーニングを積むこともほとんどありません。ですから、法律以外の交渉事を依頼されても、断る弁護士も多いです。

しかし、こういった交渉事こそ、個人的な感情から一定の距離をおいて話し合える代理人の存在がとても重要です。第三者をいれることで、交渉の最大の敵であるバイアスを避けることもできます。

交渉では、積極的に第三者をいれることをお勧めしています。

 

翻って、岡島さんの話に戻ると、本来であれば、新人であるほど交渉力がないため代理人を入れる必要があり、ベテランほど交渉力があるので代理人は不要なはずです。

それなのに、新人ほど「おまえなんかが代理人入れるの?」と言われ、ベテランになれば「代理人を付けるに値するベテラン」みたいな評価を受けるわけです。

普通に考えれば変ですよね?

 

世の中は本当に不思議な事だらけです。贅沢してないのに痛風になりそうだし。

ではまた(^^)

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