緊急事態宣言が延長されて、新型コロナウイルスのネガティブな影響はまだまだ続きそうですね。
みんなそれぞれの事情で今後に不安を抱えています。
じゃあコロナの問題が解決したら不安がなくなるかと言えば、そういうわけでもなくて、また別の悩みで不安は続くのでしょうね。
不安とは実に厄介な感情です。
何か新しいことを始めようとしたときに、最大の障壁となるのも不安です。自分にはそのことをしようとする価値も能力もないと、心のどこか(あるいは中心)で思ってしまいます。多くの人が感じるこういう恐れは、詐欺師や偽物という意味の「インポスター」をとって、「インポスター症候群」と呼ぶそうです。
こういう現象に名前を付けることは良し悪しですね。現象に名前を与えることで、かえって人をその現象に引き寄せてしまうのではないかとも思います。そんな名前を付けなければ、「気のせいだよ」といって済んでしまいそうなことも、大げさな名前がついていることで、「気のせいじゃなかった。やっぱりこの不安感は本当なんだ!」と信じ込ませてしまう気がするからです。
まあそれはさておき、この不安感というものについては、私も気のせいではないと思います。弁護士という職業柄、業界外の人からは何かすごく頭がよくて回転も速くて、物おじしない人のように見られがちです。ですが、実際は毎回の相談の際には緊張していますし、何か人前で話さないといけないときには「自分が人に何か語れるほど偉いはずがない、逃げたい」という恐怖にかられます。いつもそうです。
そして、こういう恐怖感というものは、みなさん口に出さないだけで、ほとんどの社会的地位があると言われている方も感じているのではないかと思うわけです。
それなのに、全く未経験のことであっても、なぜか「弁護士さんなら簡単にできますよ」なんて言われることもよくあります。「頭がいいからすぐ覚えられますよ」とか。
弁護士として法律的な意見を求められたときは、自信がなくてもあるかのように見せることが相手に安心感を与えるので、無理してでもそうします。
でも、弁護士業務以外の場面で、こういうプレッシャーと逃げたい恐怖に駆られたときは、私は、それが未経験のことであれば、未経験者であることをできる限り伝えるようにしています。
それは、単に失敗した場合の言い訳を作るという意味だけではありません。実際に未経験者であることは、その業界の常識にとらわれず行動できるというメリットがあり、周りからも未経験者だからと大目に見てもらえるという特典があります。なにより、自分自身未経験者であると自覚することで、より良く学ぼうという意識を強く持つこともできるからです。
状況によっては、未経験だと伝えること自体に勇気が必要な場面もあります。でも、後になって知ったかぶりをする苦痛を考えると、最初から知識がないと正直に言う方がはるかにましです。
それに、最初に言いましたが、だいたいの人は不安を抱えています。あなたが、未経験ですと伝えたほうが、大体の人は共感してくれてかえって話をしやすくなります。これは本当です。
ですから、「だいたいみんな不安なんだ、自分ひとりじゃないんだ」という気持ちで、その気持ち自体を伝えるようにするのが、一番楽ですし、成功への近道だと思います。
交渉でも知らないことは相手から教えてもらい、十分に意思疎通ができて初めてお互いに合意できるのですから、知らないということ・未経験だということは、かえって相手と仲良くなれるチャンスだと考えても良いかもしれません。
というわけで、みなさんどうか私をかいかぶらず、その辺の商店街の兄ちゃんと同じように接してあげてくださいね。
ではまた(^^)
illustrations by Martina Skender
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